・ Music Selection
  ・ 本荘2026年6月(再生リスト)

・ テーマ:見えないコストを見えるようにする
  ・ 「受益者」と「費用負担者」の地理的・社会的分離

■ 今回 6/4 の話題(準備メモ)

■ 新話題:AI データセンターが見せたくないもの

・ YouTube 動画:We Saw What AI Data Centers Don't Want You to See ・ 動画が示す主な実態(視聴メモ) ・ AI の急速な拡大に伴い、データセンターの建設ラッシュが世界各地で進行 ・ エネルギー消費 ・ 大規模データセンター 1 棟で小国並みの電力を消費 ・ 再生可能エネルギーへの移行より建設スピードが速く、石炭・ガス火力への依存が続く ・ 水消費(冷却) ・ AI サーバーは熱を大量に発生させるため、膨大な水量を冷却に使用 ・ 水不足地域に建設されるケースも多く、農業用水・生活用水と競合 ・ 地域コミュニティへの影響 ・ 電力需要増加による地域の電気料金上昇 ・ 土地・水資源の占有と地域農業・生活への圧迫 ・ 騒音・景観・インフラへの負荷 ・ 企業の「グリーン」な公言と実態のギャップ ・ 「脱炭素・サステナビリティ」を掲げながら、実際の消費は急増 ・ データは「機密」として非開示のものが多い ・ コスト外部化の構造との接続(前回 5/7 の視点1を深化)
コスト種別 誰が利益を得るか 誰がコストを負担するか
電力コスト テック企業・AI ユーザー(世界中) データセンター立地の地域住民
水コスト テック企業・AI ユーザー(世界中) 地域の農業・生活・生態系
炭素コスト テック企業・AI ユーザー(今) 将来世代・地球全体
土地コスト テック企業 立地地域の住民・産業
  ・ 具体事例:つくば市・高エネ研南側用地(身近な例)

    ・ 経緯
      ・ つくば市土地開発公社が保有していた高エネ研(KEK)南側の未利用地(約45ヘクタール)
      ・ 2022年:グッドマンジャパンつくば特定目的会社に売買契約締結
        ・ 売買価格:約110億円(11,029,248,000円)
      ・ 2025年9月:つくば市議会・全員協議会で開発進捗を報告
    ・ 開発規模
      ・ 最大 1,000MW(1GW) の電力確保 = 原子力発電所 1 基分に相当
      ・ 1 棟目(50MW)2026年完成予定。以降、順次拡張予定
      ・ 施設構成:データセンター(主)、物流施設、防災拠点施設、アメニティ(ドッグランなど)
    ・ 開発主体
      ・ Goodman Group:オーストラリア証券取引所(ASX)上場のグローバル不動産・デジタルインフラ企業
      ・ 印西市(千葉)でも 300MW 超のデータセンタービジネスパークを運営
      ・ 香港・シンガポールへもアジア展開を加速中
    ・ 公開資料
      ・ 高エネ研南側用地の利活用(つくば市)全員協議会資料(令和7年9月29日)グッドマン プレスリリース(2024年1月)

  ・ 問題点の整理(つくば市ケースから)

    ・ 電力規模の問題
      ・ 1,000MW(1GW)= つくば市の家庭・産業の電力需要を大幅に超える可能性
      ・ どの発電源から調達するか、再エネ比率はどうなるか → 公開情報なし
      ・ 電力系統への負荷増大 → 地域の電気料金・安定性への影響
    ・ 雇用への貢献の薄さ
      ・ 建設時は一時的な雇用(土建・インフラ)
      ・ 運用後は高度な専門職のみ → 地元雇用はほぼ生まない
      ・ → 110億円分の公有地が売却されたが、地域経済への恩恵は限定的
    ・ 水消費の問題
      ・ データセンターの冷却には大量の水が必要(10MW規模で年数十万トン規模)
      ・ 関東平野の農業地帯・研究学園都市の水源への影響 → 公開情報なし
    ・ 「防災拠点施設」の位置づけ問題
      ・ 施設の一部を防災倉庫・多目的広場として整備 → 市への貢献として演出
      ・ しかし主目的はグローバルテック企業向けデータセンター運営
      ・ → 「地域貢献」の名目で公有地を取得し、グローバルな利益を得る構造
    ・ 意思決定プロセスの問題
      ・ 2021年:市民説明会(大穂交流センター等)→ 意見交換録あり
      ・ 2022年:売買契約締結
      ・ 市民が計画の全体像(1,000MW規模)を把握できていたか?
      ・ → 「グリーン開発」の公言と実際の電力消費規模のギャップ

  ・ 「見えない」ことの構造(つくば市ケースから一般化)

    ・ つくば市(地域)が負うコスト
      ・ 公有地(税金で形成された資産)の売却 → 110億円で民間に移転
      ・ 電力・水・インフラの消費
      ・ 将来の都市計画上の選択肢の喪失(45ヘクタールが長期にわたり民間占有)
    ・ 恩恵を受けるのは誰か
      ・ Goodman Group(ASX上場、オーストラリア本拠)
      ・ データセンターを利用するグローバルテック企業(AI プロバイダー)
      ・ AIサービスのユーザー(世界中、主に先進国・都市部)
    ・ 地理的・社会的分離 → sympathy の遮断
      ・ AI の恩恵享受者(東京・シリコンバレー等)とコスト負担者(つくば市民)が分離
      ・ Adam Smith TMS:sympathy は「想像できること」を前提にする
      ・ AI ユーザーはつくば市の電力・水・土地を使っていることを想像しない
      ・ → これが「見えないコスト」を持続させる構造的メカニズム

  ・ 前回(5/7)との比較
    ・ プーチン・ネタニヤフ・トランプのコスト外部化(政治・軍事・外交)
    ・ ↕(構造的類比)
    ・ テック企業のコスト外部化(経済・環境・社会)
    ・ 共通点:受益者 ≠ 費用負担者、かつ両者は「見えない壁」で隔てられている
    ・ 違い:暴力・侵略は「見えやすい」が、データセンターの消費は「見えにくい」

  ・ 本荘 2019 論文との接続(候補)
    ・ 雇用・マクロ経済の視点:データセンターは雇用を生むか?
      ・ 建設時は一時的な雇用
      ・ 運用時は自動化されており、地域雇用はほぼ生まない
      ・ → 「投資は来るが、雇用は来ない」新型の地域格差
    ・ AI による労働市場の変化とデータセンターの膨張は表裏一体
    ・ ケインズ的問い:このような「投資」は誰のための完全雇用・厚生か?

  ・ 問い(未整理)
    ・ AI は「コスト外部化の道具」か「コスト削減の道具」か?
    ・ それとも両方同時に起きているのか?
    ・ 誰がこの問いを立てる立場にあるか?(= 政治・経済・学術の役割)
    ・ 本荘さんはつくばの件をどう見ているか?(地元住民として、研究者として)


■ 別の観点:民主的意思決定の構造的限界

・ 問いかけ ・ なぜ多数決か? ・ 間接合議 vs 直接合議 ・ 失恋の方がテーマになりやすいのはなぜか? ・ 「失恋の方がテーマになりやすい」理由(sympathy の射程問題) ・ 失恋 → 普遍的・個人的体験 → 誰でも想像できる → sympathy が即座に成立 ・ データセンターの電力・水消費 → 抽象的・地理的に遠い・数字でしか語れない → 想像しにくい → sympathy が成立しにくい → テーマになりにくい ・ Adam Smith TMS の核心:sympathy は「想像の容易さ」に比例する ・ 失恋 = 身近で具体的 → 文学・映画・音楽の主題になり続ける ・ データセンターの環境コスト = 遠くて抽象的 → 報道はされても「心が動かない」 ・ → 「見えないコスト」問題は sympathy の構造的限界と同じ問題 ・ 「なぜ多数決か?」との接続 ・ 多数決の前提:各有権者が自分の利益・損害を正しく認識・表明できる ・ しかし「見えないコスト」は有権者の認識に入らない ・ データセンターの消費者(AI ユーザー)は恩恵を感じても、つくば市の負担を感じない ・ つくば市民も、1,000MW 規模の意味を市民説明会時点で把握できたか? ・ → 多数決は「見える利益・コスト」しか集計できない ・ Arrow の不可能性定理(参考):個人の選好を集計しても社会的に合理的な順序は作れない ・ ただし問題はそれ以前:そもそも「選好」に見えないコストが入っていない ・ 「間接合議 vs 直接合議」との接続 ・ つくば市のケース = 間接合議(市議会・全員協議会) ・ 市民説明会(2021)は開催されたが、意思決定の実質は行政・議会 ・ 1,000MW 規模の計画が市民に伝わっていたか → 疑問 ・ 直接合議(住民投票・市民参加型決定)なら変わったか? ・ 仮に住民投票があっても、「見えないコスト」(水・電力・将来の選択肢の喪失)が 正確に情報提供されなければ、多数決でも同じ結果になりえた ・ → 問題は「合議の形式」より「情報の可視化」 ・ 深い問い:誰が「見えないコスト」を可視化する役割を担うべきか? ・ メディア? 研究者? 市民活動? 国際機関? ・ → これが「本荘 2019 論文の問題意識(雇用・マクロ政策)」とどう接続するか ・ 三つの問いの統合 ・ 「失恋の方がテーマになりやすい」= sympathy の射程外にあるコストは政治的にも見えない ・ 「なぜ多数決か」= 多数決は「見える選好」しか反映しない ・ 「間接 vs 直接合議」= 形式より情報の可視化が問題の本質 ・ → 共通する問い:「見えないものを見えるようにする」のは誰の仕事か? ・ = 経済学・社会科学の存在意義の問い ・ = 本荘 2019 論文が立っている場所の問い ・ フレームの問い(前回積み残し) ・ 「変質社会主義 vs 民主主義・法の支配」という軸が崩れたあと、何を基準にするか ・ 「コスト外部化」軸は体制を問わず使えるか? → AI 企業の例で検証 ・ Morricone の2曲(対話後の感想があれば追記) ・ 本荘さんの反応・感想 ・ 「静かな必然性」と sympathy の話をどこまで展開できたか ・ 峰不二子 & Adam Smith TMS(対話後の感想があれば追記) ・ sympathy の成立条件について、本荘さんの見解

■ 世界情勢スナップショット(2026-06-04)

・ 中東(米・イスラエル vs イラン) ・ イランがクウェート国際空港を攻撃 → 死者1名・負傷63名(6/3) ・ イランは「ホルムズ湾のアメリカ軍艦船を攻撃した」と主張、米軍は否定 ・ 米下院が「大統領のイランへの戦争権限を制限する」決議を可決(6/3) ・ → トランプの行動に議会が制動をかける動き ・ イスラエル:レバノンの病院3棟を1週間以内に攻撃 ・ トランプ:「停戦交渉中」と発言 ・ 今回の対話テーマとの接続 ・ 「コスト外部化」軸:軍事コストはクウェート・レバノン市民が負担 ・ 「sympathy の射程」:遠い地域の被害は見えにくい → 米国内の世論形成が遅れる ・ ウクライナ ・ ウクライナのドローンがサンクトペテルブルクを攻撃(6/3) ・ タイミング:「ロシアのダボス会議」(サンクトペテルブルク国際経済フォーラム)の開幕と重なる ・ ウクライナ軍、同市の石油精製施設も攻撃 ・ テニス選手 Marta Kostyuk(ウクライナ):ロシア選手への批判発言が話題 ・ 「あなたの国が他の人々を殺している」 ・ トランプの通商・国内政策 ・ 「強制労働」を理由に60か国(英・カナダ含む)への25%関税を脅迫(6/3) ・ ブラジルにも25%関税提案(米国が貿易黒字にもかかわらず) ・ 連邦職員8,000人を解雇しやすくする大統領令に署名(6/3) ・ 上院共和党:ホワイトハウス舞踏場の警備費10億ドル計上案を撤回 ・ 今回の対話テーマとの接続 ・ 「コスト外部化」軸:関税コストは同盟国・輸入消費者・将来の国際秩序が負担 ・ 「sympathy の遮断」:受益者(米国内製造業)と被害者(同盟国・消費者)が分離 ・ 天安門事件から37年(6/4) ・ 「毎年新しい写真が届く」:記憶を保存しようとする人々の闘い ・ 中国本土では検閲により事実上記念不能 ・ 気候・環境 ・ 台風 Jangmi が日本に接近、欧州では記録的熱波(スペイン40℃予測) ・ ヨーロッパ:「なぜ極端な暑さへの備えがいまだに不十分なのか」(Guardian 特集) ・ AI・テクノロジー(本日の文脈と重なる話題) ・ EU:外国政府や企業が欧州のテックサービスを遮断できないよう「キルスイッチ」規制を検討 ・ 自律型 AI ドローン:「道徳を搭載できるか?」(Guardian 特集) ・ → AI の軍事利用 = コスト外部化のもう一つの形 ・ 参照 ・ 本荘 2019 論文(雇用・マクロ経済)Adam Smith TMS 研究メモ前回 2026-05-07(コスト外部化・峰不二子・Morricone)Dialogs with Professor Y. H.