ケインズの雇用理論と金融政策に関する一考察

■ 書誌情報 タイトル: ケインズの雇用理論と金融政策に関する一考察 Title: A Study on Keynes's Employment Theory and Monetary Policy 著者: 本荘 康生 (Yasuo Honjo) 所属: 千葉商科大学 商経学部 ファイナンス経済学科 教授 発行年: 2019年7月 シリーズ: CUC Discussion Paper No.24 発行: 千葉商科大学 国府台学会 ISSN: 1347-3220 ページ数: 24ページ 言語: 日本語 ■ 概要 わが国経済は1990年代中頃以降長期にわたり低迷している。そのような中で2013年1月、 日本銀行は消費者物価指数(コアCPI)の上昇率2パーセントというインフレ目標(「物価安定の 目標」)を設定し、それを実現するために、同年4月には「量的・質的金融緩和政策」という これまでにない規模の金融緩和政策を導入した。インフレ目標を設定し、「量的・質的金融 緩和政策」によりハイパワード・マネー(マネタリー・ベース)を増加させ、予想物価上昇率を 引き上げて予想実質利子率を低下させ、総需要を喚起させようとしたのである。物価水準を 上昇させてデフレから脱却し、インフレ基調を実現できれば、生産量および雇用量が増加し 経済は回復に向かうという考えである。 ジョン・メイナード・ケインズは、その主著『雇用・利子および貨幣の一般理論』(以下、 『一般理論』とする。)において、短期という前提の下で、不況時には財政政策や金融政策に よって総需要(有効需要)を喚起させて経済を回復させることを主張した。かかる過程を通して 物価水準が上昇することにより労働市場では実質賃金率が下落し、雇用量が増加するのである。 両者の主張は、物価水準の上昇により生産量および雇用量を増加させ、経済を回復させる ということでは一致しているが、そのメカニズムは異なるものである。 本稿は、まず、『一般理論』においてケインズが展開した雇用理論について詳細に検討する。 次に、日本銀行による「量的・質的金融緩和政策」によってハイパワード・マネーが増加した としても、それがマネー・ストックの増加には繋がらず、物価水準の上昇が実現する可能性が 低いことを論証する。そして、1990年代中頃以降わが国においては、雇用の形態が変化すると いう構造的な問題が生じており、そのことが経済格差を拡大させ総需要の増加を鈍化させて いることを説明する。さらに、日本銀行が想定するメカニズムもケインズが想定するメカニズムも 長期的には機能しないことを論証し、総需要が喚起されるような雇用形態の確立を検討する 必要があるということを論じる。 ■ キーワード ・ケインズ経済学 (Keynesian Economics) ・雇用理論 (Employment Theory) ・一般理論 (The General Theory) ・金融政策 (Monetary Policy) ・量的・質的金融緩和 (Quantitative and Qualitative Monetary Easing) ・アベノミクス (Abenomics) ・日本銀行 (Bank of Japan) ・インフレ目標 (Inflation Targeting) ・マネタリーベース (Monetary Base) ・ハイパワードマネー (High-powered Money) ・有効需要 (Effective Demand) ・デフレーション (Deflation) ・実質賃金 (Real Wages) ・雇用形態 (Employment Structure) ・経済格差 (Economic Inequality) ・日本経済 (Japanese Economy) ・1990年代以降の低迷 (Post-1990s Stagnation) ■ 目次 1. はじめに 2. 『一般理論』における労働市場の分析 3. 金融政策とトランスミッション・メカニズム [1] 「量的・質的金融緩和政策」のトランスミッション・メカニズム [2] ハイパワード・マネーとマネー・ストック 4. 『一般理論』における労働市場の分析とトランスミッション・メカニズム 5. 雇用形態の変化と総需要 6. 結語 ■ 研究の意義 本論文は、以下の点で学術的・政策的意義を持つ: 1. 理論的検討: ケインズの『一般理論』における雇用理論を詳細に再検討し、 現代の金融政策との比較分析を行っている。 2. 政策評価: 日本銀行の「量的・質的金融緩和政策」(アベノミクス)の トランスミッション・メカニズムを理論的に検証し、その限界を指摘している。 3. 構造問題の指摘: 1990年代以降の日本経済低迷の原因を、単なる需要不足ではなく、 雇用形態の変化という構造的問題として捉え直している。 4. 政策提言: 金融政策の限界を示した上で、雇用形態の改革の必要性を論じており、 今後の経済政策への示唆を提供している。 ■ 関連テーマ ・日本経済の長期停滞 (失われた20年、30年) ・非正規雇用の増加と経済格差 ・金融緩和政策の効果と限界 ・ケインズ経済学の現代的意義 ・労働市場改革 ・所得分配と有効需要 ■ PDF ダウンロード ・ 論文PDF (フルテキスト) ■ 参考リンク ・ Economics for the Climate Change Problem (トップページ)参考文献一覧に戻る --- 最終更新: 2025年12月6日 このページは検索エンジン最適化 (SEO) のために作成されています。 論文の著作権は著者に帰属します。