・ 議論の方向性についてのメモ

    ・ 賃金に関する逆方向変動法則の有効確率
      ・ p.7 などの(数学的な)推論の正確性については検討の余地があるものの、
      ・ 全体の流れに影響しないためには、高い確率で言えればよいので、どの程度の確率になるかを検証する。

    ・ 労働分配率
      ・ 賃金および物価との関係の明確化

    ・ (量的・質的)金融政策の有効性への反証

    ・ 雇用形態の変化と失業・低迷との因果関係・影響度検証
      ・ 結論となる雇用形態の変化については、因果関係の探求・検証を試みるとともに、
      ・ 定量的な評価ができる方向のアイデアを模索する。
      ・ 要因分析
        ・ 就業の不連続性による年収低下への影響度
        ・ 業種・職場選択の不安定性による生産性低下への影響度
          ・ 業種依存のスキル・知識が活用(再利用)できない
          ・ 業種依存のスキル・知識を新に獲得するための労力
          ・ 職場依存の人間関係、組織理解の再構築に要する労力
        ・ 不本意の場合の労働意欲への影響度
        ・ 諸要因の総合(悪循環)による影響の逓増性

本荘2019解読メモ

■ 本荘, 2019 の論点整理

・ まとめ ・ この表は作業中のもので、議論の進行に合わせて更新します。
理論区分要点非自発的失業自発的失業分析・対策評価・結果
古典派理論 労働需給曲線 区別なし 大恐慌の失業が説明できない(問題状況と認識しない)
ケインズ一般理論 労働需給曲線(一般化) 非自発的な失業が問題であり、賃金操作では解決しない 有効需要の増出が必須であると認識する
本荘2019, p.7-1 $ \frac{d \pi}{d q} = 0 $ 貨幣賃金率・実質賃金率の逆向き変動の法則
本荘2019, p.7-2 $ W = P \cdot Q \cdot S, \frac{d S}{d t} = 0 $ 貨幣賃金率・実質賃金率の逆向き変動の法則
本荘2019, p.9 $ \frac{d \pi}{d l} = 0 $
本荘2019, p.12 岩田2013 第一の矢 量的・質的金融緩和政策 ハイパワード・マネー増加するも、マネー・ストック増加せず
本荘2019, p.18 $ W = P \cdot Q \cdot S, \frac{d S}{d t} \neq 0 $
本荘2019, p.18 雇用形態(正規・非正規)
・ 第2節のまとめ ・ 第2節の論点は、次の2つ ・ 【論点1】賃金率逆向き変動法則 ・ 【論点2】需要拡大策が有効になる理由 ・ この理由において、(少なくとも結論的には)古典派理論と一般理論の違いはない。(高橋の理解) ・ 従って、(厳密な意味で)あえて一般理論を援用する必然性があるとすれば、 ・ 非自発的失業が発生している状況(後掲の伊東1962 第10図参照)にあることへの言及が必要ではないか? ・ 【論点1】賃金率逆向き変動法則 ・ この法則は、一般理論とは直接の関係がない(と思われる)。 ・ 完全競争と収穫逓減だけからでは成立せず、その他の条件が必要である。(予想) ・ p.7-1 → 20250201, 20250205 メール添付図参照 ・ p.7-2 → 時間経過に伴う前提条件の明確化が必要 ・ 仮定 $ \frac{d S}{d t} = 0 $ の意味 ・ $ W = P \cdot Q \cdot S \Leftrightarrow \frac{W}{P} = Q \cdot S \Leftrightarrow \frac{W}{P} \propto Q $ ・ ここで、$ \propto $ は比例関係を示す。 ・ すなわち、$ \frac{d S}{d t} = 0 $ という仮定は、$ \frac{W}{P} $ と $ Q $ の比例関係と同等。 ・ 【論点2】についての疑問点 ・ 貨幣賃金率を一定と仮定して ・ 本荘2019 のどちらの図(図-1、図-2)でも、物価が上昇すれば、実質賃金が下がり、 ・ 労働需要曲線が上方にシフトして失業が減少する点では同じに見える。 ・ その意味では、有効需要の増加という対策は、どちらの理論でも有効なのではないか? ・ もしそうなら、違いは、次の点にあるのではないか? ・ 古典派理論では、無策でも均衡に戻ると考えるが、 ・ ただし、非自発的失業という考えがないので、問題のない均衡としか認識しない。 ・ いずれ均衡が得られるのであれば、深く心配する必要はない。 ・ ケインズ一般理論では、無策では均衡に戻らないと考える。 ・ すなわち、賃金率は一定以下には下がることはないので、需要を増やす以外に均衡を達成するすべはない。 ・ 無策を選択することは、非自発的失業を無視することになる。 ・ この意味では、違いは、帰結される対策の違いというより、無策が許容されるか否かにあると言えるのではないか? ・ (上記疑問点に関する)ケインズ雇用理論(一般理論 第2章)のまとめ ・ 古典派理論: 無策でも均衡に向かう ・ 一般理論: 無策では均衡に向かわない ・ どちらの理論でも、需要拡大策は有効である。 ・ 従って、一般理論の意義は、無策か需要拡大策かの二者択一が問われたとき、 ・ 古典派理論ではどちらの選択もありえても、 ・ 一般理論では後者を選択する以外に道はないことを示した点にある、といえる。 ・ 目標とする結論 ・ 経済低迷の主要因は、雇用形態の変化による失業率の悪化であることを主張する。 ・ 失業率の改善のためには、金融政策ではなく、雇用形態を正常化すべきである。

■ 伊東光晴さんの本(2006)から

  1. 多元的(double-jointed)な理論
  2. 統計的検証可能(observable)な理論
  3. 不確実性(uncertainty)の前提
  4. 合成の誤謬(fallacy of composition)の発見
  5. 方法的個人主義の否定
from 現代に生きるケインズ, p.59 by 2006, 伊東 光晴
古典派の労働需給曲線

from p.61, 2006, 伊東 光晴
ケインズの労働需給曲線

from p.76, 2006, 伊東 光晴
群盲象を評す

from Wikipedia
ケインズの労働需給曲線における古典派の説明範囲

from p.100, 1962, 伊東 光晴 (derived from L. R. Klein)

■ 本荘さんの論文(2019)から

  (Ⅰ) 賃金は労働の[価値]限界生産物に等しい。

        The wage is equal to the marginal product of labour.


  (Ⅱ) 一定の労働量が雇用されている場合、賃金の効用はその雇用量の限界負効用に等しい。

        The utility of the wage when a given volume of labour is employed
        is equal to the marginal disutility of that amount of employment.
      

from 2019, 本荘 康生

from 2019, 本荘 康生
・ 古典派の理論では、貨幣賃金率の引き下げで均衡が回復する。 ・ すなわち、失業がなくなる。 ・ ケインズの一般理論では、実質賃金と貨幣賃金の変動は反対方向になるので、 ・ 貨幣賃金率の引き下げでは均衡が回復しない。 ・ 証明 1.1(本荘, 2019)commented by 高橋
まず、貨幣賃金を $W$、物価水準を $P$ として、実質賃金の定義 $ Y = \frac{W}{P}$ から、 $ \frac{d Y}{d W} = \frac{1}{P^2} (P - W \frac{d P}{d W}) = \frac{W}{P^2}(\frac{P}{W} - \frac{d P}{d W}) $ すなわち、 $\frac{W}{P}$ と $W$ の変動の相反は、$ \frac{P}{W} < \frac{d P}{d W} $ のときに限って発生する。 次に、この条件と利潤計算式 $ \pi = P \cdot q - (FC + u \cdot q + W \cdot l)$ との関係を見るため、 利潤最大化条件 $ \frac{d \pi}{d q} = 0 $ から $ P = u + W \cdot \frac{d l}{d q} $ を得て、 上記の相反条件は、$u$ が $W$ に依存しないと仮定すれば、$ \frac{d l}{d q} $ を使って、次のようにも書けるが、 $ \frac{P}{W} < \frac{d P}{d W} = \frac{d l}{d q} + W \cdot \frac{d}{d W}(\frac{d l}{d q}) $ 右辺第2項の複雑さから、使いやすいものではないので、$ \frac{d l}{d q} $ を使った説明は分かりにくくなる可能性がある。 (すなわち、左辺で説明した方が分かりやすい)
・ 証明 1.2(本荘, 2012) ・ $ W = P \cdot Q \cdot S $ ・ $ Y = \frac{W}{P} = Q \cdot S $ ・ S が一定という仮定の下では、 ・ $ \frac{d Y}{d W} = S \cdot \frac{d Q}{d W}$ ・ なので、$ Y $ の変動の向きは、$ \frac{d Q}{d W} $ の符号(すなわち、正か負か)で決まる。 ・ 証明 2(伊東, 1993)

■ 伊東光晴さんの本(1993)から

■ ケインズ一般理論(1936)から

・ 一般理論の(重要な)目的の1つが、非自発的失業を理論に取り込むことであり、 その意味で、古典経済学の不備が説明されている。 ・ 次の3仮定は、全体が、同時に成立するか、または、同時に崩落するか、 のいずれかであり、どの1つも論理的に他の2つを包含している、 という意味で、同義である。(第2章 古典経済学の公準 のまとめ) (1) 実質賃金は、既存雇用の限界負効用に等しい。 (2) 厳密な意味で、非自発的な失業のようなものはない。 (3) 供給は、次の意味で、自らの需要を創出する。 総需要価格は、全水準の産出と雇用について、総供給価格に等しい。 原文: (1) that the real wage is equal to marginal disutility of the existing employment; (2) that there is no such thing as involuntary unemployment in the strict sense; (3) that the supply creates its own demand in the sense that the aggregate demand price is equal to the aggregate supply price for all levels of output and employment.